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◆フリーキック

【ブラジルサッカー通信<5>】
ブラジルと日本、2つのサッカー世界

<文・写真 手島直幸(ブラジルに出張中)>


◆ブラジル杯準決勝を見る
 ブラジル杯(コッパドブラジル)準決勝第1戦コリンチャンス対バスコダガマはリオのマラカナンスタジアムで5月27日に行われ、1対1の引き分けであった。セリエBに落ちたバスコダガマは、ブラジル杯2009では、カルロス・アウベルトの活躍などで準決勝まで勝ちあがってきていた。
 第2戦は6月3日夜10時からサンパウロ・パカエンブー・スタジアムで行われた。テレビ局の都合で10時という遅い時間設定になっている。8時すぎにホテルを出て徒歩でスタジアムに向かう途中、人通りが少ないので、時間が遅いからみんなテレビ観戦なのだろうと思ったら、スタジアムの周りは、いつも以上の人の波であった。大事な試合なので試合開始の2時間も前に集まってきていたのだ。切符は売り切れ。ダフ屋をさがす。人の群れの中に巻き込まれた。警官隊が動きを抑えているが後ろから大声を上げながら押してくる。しばらく身を任せていたが怖くなって何とか抜け出した。

◆バスに放火、サポーター1名死亡
 翌日のテレビニュースで知ったのだが、わたしがスタジアム正面でコリンチャンス・フアンの波にもまれているとき、スタジアムの裏側方面、200mくらい離れたところで、バスコのサポーターの乗ったバスをコリンチャンス・サポーターが襲い、バスに放火した事件が発生していた。死者1名けが人多数、コリンチャンス・サポーター7〜8人が逮捕されたと報じられていた。
 事件が起こった場所とスタジアムの間の道路は、機動隊のバスが封鎖し、騎馬警官などが配置されていたので、大方のコリンチャンス・サポーターは、事件を知らなかったはずだ。しかし、あとから思えば、あのとき人波にもまれたとき感じた体を押し上げるようなエネルギーが、あの夜のパカエンブー周辺全体を支配していて、事件を引き起こしたのだ。
 切符が手に入らないと見切ってホテルに戻ってテレビ観戦することにした。試合前にひとり帰るのは若干危険を感じた。「暗い夜道の一人歩きはやめましょう!」。コリンチャンスの旗を20R$で買って体を包んで、早足で歩いた。携帯電話で調査団の団長に電話して、しばらく付き合ってもらった。無事10時にホテルに戻った。試合は0対0で引き分けだった。アウエーで得点のあるコリンチャンスが決勝に進み、インテルナシオナウと対戦することになった。

◆「違う世界」へ帰って来た
 6月7日午後1時過ぎ、成田空港に降り立った。なんでこんなに多くの報道陣がいるのかと思ったら、ウズベキスタンから帰国する日本代表チームを待っているのであった。試合が行われたときは、経由地ニューヨークから飛び立った飛行機の中で結果を知らなかった。サンパウロ、ニューヨーク、タシケント、東京とそれぞれの時間で人は動いている。テレビやインターネットでリアルタイムの1つの世界で動いているように見えるが、生身の人間の感覚はちがう。「25時間の狭い飛行機の中を通って、違う世界(パラレル・ワールド)に帰ってきた」と言う感じだ。話題の村上春樹「1Q84」を模して言うならば、2ヵ月前、ブラジルへ向けて出発したときの2009年日本から「200Q」日本へ移ったと言うことであろうか。

◆あまりにみすぼらしい日本代表
 ウズベキスタン戦はニュースなどでみたが、岡崎の泥臭いゴール以外は日本によいところなかった。
 6月10日横浜で行われたカタール戦、ブラジルサッカーに浸ってきた目には、あまりにみすぼらしい試合であった。
 最初はよかった。開始早々、俊輔からのパスを受けた内田が右サイドをドリブルで進みセンタリング、ゴール前で岡崎をマークしていたバックが自分でゴール。
 そのあとは、「どうした日本、しっかりしろ」というばかり。疲労のためか俊輔もさえない。バックスの動きもとても悪い。1−1で終了して、解説の木村和司は「ウズベキスタンで決めておいて本当によかったです」と言っている。同感。テレビを切って目を閉じると「日本人はサッカーが下手だね。頭が悪いね。」とブラジル人にばかにされるシーンが浮かんできた。
 6月17日のオーストラリア戦は、ひどいことになるという予想をしていたとおり1−2の結果であった。欧州組は松井だけ、中沢も遠藤も出ないこのメンバーでよく抑えたと言ってほめてやるべきなのだろうか。個々の局面での選手の動きを見ているとミスが多い、判断が遅い、考えなし、動けない、勝てない。ブラジルのスポーツ新聞だったら10段階評価で1点か2点しかもらえない選手ばかりだ。

◆日本代表はブラジル・セリエBクラス?
 日本代表はどれほどのレベルだろうか。
 日本代表のメンバーの大半は、ブラジルのセリエBのレギュラーに選ばれるかどうかも疑問だと思う。もっとうまくなって、頭を使ったサッカーができるようになってほしい。
 ブラジル代表は日本代表から見ると雲の上の存在だ。セリエA20チーム、セリエB20チーム、各チーム20名とすると合計800名の国内リーグ選手がいる。カカやロビーニョなど欧州など海外で活躍する数十人をくわえた900名くらいがブラジル代表のベースであろう。 
 20数名のセレソンはその中の超人的な技量を持ったものが選ばれる。セリエAの試合をたくさん見たが、そこで光る各チームのエースですらセレソンに呼ばれもしていない。コリンチャンスのホナウドもサントスのマジソンも。

◆ブラジルの強さの秘密は肉をたっぷり
 2ヵ月間ブラジルにいて、日本サッカーを強くするために参考になることはないか観察していた。体験から日本サッカー強化のヒントを1つ得た。
 食事をしっかりとること。昼はオフィスを出て街の食堂で食事する。大きな皿に野菜、ご飯、豆、肉などを好きなだけとって計量してもらう。店によって若干の価格差あるが、大体15-18R$(700〜800円)になる。まわりのブラジル人を観察しているとほぼ同様である。肉はたっぷりとっている。この量は半端ではない。日ごろ日本で食べている量の2倍くらいになっている感じだ。
 シラスコというブラジル風焼肉を出す食堂もある。ここはウエーターが大きな肉の塊を鉄くしに刺して焼き各テーブルに持ってきて、それを好きなだけ切り取って食することができる。フィレだ、サーロインだと調子に乗って食っていると500-600gは肉を食ったことになる。まわりの女の人も老人風の人も思いっきり食べている。うまいのだからしょうがない。ブラジルの女の人は立派な胸と尻を誇らしげである。肉食あっての体格とエネルギーなのだろう。
 注意が必要なのは、肉をもっと食べることと平行して、適度の運動することである。このことを忘れて2ヵ月間で4kg増加した体重をもてあましている。

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