右サイドの疾風
(ヤマダ アキラ 2006/11/6)
アマル・オシム監督の腹の中には「今日は水野で勝負!」という思いがあったのではないか。それほどまでに、すばらしい出来だった。ナビスコカップ決勝、千葉対鹿島(国立競技場)での、ジェフの右サイド水野晃樹のことである。
今日のジェフは、スタンドの上から見ていてよくわかったのだが、ピッチを横切る長いクロスパスをサイドに散らして攻撃の起点を作っていた。これに加えて、MY BALLになった瞬間の2列目からの複数選手の飛び出しがうまくミックスされ、攻撃が機能していた。
そのピッチを斜めに横切るパスを前半から多く受けていたのが右サイドの水野。トラップするや、常に対面のDFにつっかかるようにドリブルで挑む。縦に抜けると見せて、中へ切れ込んでのシュートもあり、相手DFに的を絞らせなかった。また、アーリークロス、ファーへのクロス等緩急や角度をつけた「意図のある精度の高いクロス」も相手の脅威になっていた。
その繰り返しが実ったのが、後半30分過ぎ。右からの突破、ためらいもなく、逆サイドのネットにねじ込んだシュート。ゴールするなり、味方ベンチに駆け寄って監督に抱きつく姿が今日の先発起用の意味を物語っていると思った。
水野はユースの代表で活躍していたこともあり、早くから注目されていた選手であったが、ここ1、2年、伸び悩みか、ジェフでも途中出場が多かった選手である。そこに、大一番のカップ戦決勝での先発抜擢。喜ぶなというほうが無理だろう。
日本サッカーでは点の取れるFWの登場が叫ばれて久しいが、もっと深刻なのがサイドアタッカーの欠乏だろう。Jの試合でも、ほとんどのサイドの選手は攻め込んでも、目の前にDFが1人でもいると「回れ右」で後ろにボールを返す。
守備も攻撃もとバランス重視のためか、突破力のあるサイドの選手がなかなか育たない。
世界では、ゴールを奪うのはFWだけの考え方から、サイドとトップ下の選手との連携で、点を取る考え方に変わってきている。そういう傾向の中で、水野のような若くて生きのいい選手の登場は頼もしい限りである。慢心せず、負傷に気をつければ、近い将来、黄色のユニフォームからブルーのユニフォームに着替えるときが来るかもしれない。
ブルーのユニフォームに身を包んだ水野が右サイドを疾走する姿を見てみたい気がするのは私だけだろうか。
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