頭文字
“F”
(ヤマダ アキラ 2006/10/30)
【Fの咆哮】
10月28日柏スタジアムでJ2の天王山レイソル対横浜FCを見てきた。
40歳間近の三浦カズ、真正FLUGELSの山口素、ヘッドの強さは相変わらずの小村、エースの城、監督が高木琢也と、まるで98年ころの日本代表をみているようなメンバー。
ここまで2位の横浜FCと3位のレイソルの勝ち点差は4。
入れ替え戦なき昇格をかけた1戦だけに熱の入った戦いになり、前半1−1。
後半アレモンを投入して勝負にでた横浜FCの隙をついて、レイソルが2点を追加。3−1で勝負あったと思われた残り12分から横浜が怒涛の反撃を開始。
シンプルにアレモンに球を集中。FKのこぼれ球をアレモンが押し込み2−3。
敵ゴールからボールを急ぎ持ち帰り、センターサークルにセットする城。
ジェフに入団した当時のギラギラした姿を彷彿させた一瞬だった。
そして、ロスタイムまで数分。ゴール前で3人に囲まれながらボールを保持した城が、予想外にヒールでの抜け出し・トーキックでのゴーール!3−3。
ベンチから飛び出す高木監督とスタッフに抱きつく選手たち。そして、そのまま試合終了。
がっくり膝に手をつきうなだれる黄色のユニフォームと、勝ちに等しい引き分けに咆哮をあげる白いユニフォーム。夕陽が、ピッチの上の両者のコントラストを一層際立てていた。
戦術・技術ではJ1の中堅チーム以上とは比較にならないかもしれない。しかし、横浜FCの選手たちの姿は、日本サッカーでは久しく見ることができずに忘れていたものを思い出させてくれた。闘う気持ち、ゴールを奪うという執念、勝利を目指す一体感。
いいものを見せてもらった。
【Fの帰還】
J1昇格がなった場合、山口素の脳裏に去来するのはどんな思いだろうか。
フリューゲルス最後の天皇杯決勝で清水を下して、貴賓席からカップを高々と掲げた彼の姿 (その後ろでひきつった笑いを浮かべる川淵チェアマン(当時))
は未だに忘れない。
一部の権力者の独断で横浜マリノスに吸収合併され横浜 “F” マリノスが誕生する一方、それに満足せずに立ち上がった市民球団「横浜FC」。
経営陣の内紛を克服しながらの苦節10年。もう、そこにJ1の光が見えてきた。
山口には、そうした経緯も含めて語ってほしい気がする。
「J1に戻ってきました。だから、“F” の文字を僕たちに返してほしい」と…。
其の時、Fの帰還が完結する。
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