アーカイブス・ヘッダー

 

   
サッカーマガジン 2005年12月13日号
ビバ!サッカー

神戸のJ2落ちと経営の責任

 ヴィッセル神戸のJ2落ちに関西のメディアはかなり注目した。地元の神戸新聞は降格決定の翌々日、11月22日付けの社説で取り上げた。新聞の社説は天下国家の大事を論ずるものだと思っていたので、いささか驚いた。神戸新聞はスポーツ面でも「迷走の果てに」というタイトルの連載をした。朝日新聞も大阪本社発行版のスポーツ面で「神戸の試練」と題する連載をした。Jリーグの問題が天下国家ではないにしても「地域の大事」として扱われたことは確かである。
 そのなかで三浦淳宏選手の「プロとして絶対にやってはいけないのは、(降格を)人のせいにすること」という談話が引用されていた。自分たちが「きちんと反省してJ1に帰りたい」という趣旨である。
 選手としては立派なことばである。
 しかし、ヴィッセル神戸の迷走は、チームのせいではなく、クラブの経営の責任だと思う。そのへんを地元メディアは 遠慮なく究明してほしい。
 監督もチームのゼネラルマネジャーもシーズン中にくるくると変わった。その人選にも疑問の声があがった。これは経営の問題である。 
 ヴィッセル神戸は前年の暮れに16億円の負債を抱えて事実上破産した。これは経営の主体だった神戸市の責任だった。 
 クラブはインターネット企業「楽天」に売り渡された。今シーズンの迷走が、新しい経営者の不慣れのせいだったのなら、その事情を反省する必要がある。 
 経営者が変わると、新しいオーナーが自分のスタッフをクラブ経営に送り込んでくる。その場合によくあるケースが二つある。  
 一つは、送り込まれた人物が経営者の意向ばかり気にして「上を向いて歩く」ことである。チームの現場からは浮き上がった施策が一貫した方針もなく打ち出されたりする。 
 もう一つのケースは周辺から現われた外部の人物に振り回されることである。送り込まれた責任者は、サッカーの世界について知識がなく人脈もない。そこに「サッカーに詳しい」人物が現われてアドバイスをする。クラブの現場の人間にまず聞くべきところを、現場に対抗しようとその人物を顧問のようにして頼ってしまう。そういうことが、ままある。
 神戸がそうだという話ではない。だいぶ前ではあるが、ぼくが身近に見聞したことを思い出して「そうでなければいいが」と思っているわけである。 
 J2落ちそのものは、そんなに心配することはない。順位の変動の一種にすぎない。クラブ経営の体制あるいは体質のほうが問題である。


前の記事へ戻る
アーカイブス目次へ

コピーライツ