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サッカーマガジン 2005年8月16日号
ビバ!サッカー

ベッカムへのツバ吐き事件

 夏休みに入って、レアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・ユナイテッドなどが、次つぎに日本へやってきた。有名クラブのオフシーズンのギャラ稼ぎ。いろいろ批判もあるようだが、世界のスターが集結するのは豪華なもんだ。
 軍団のなかでも一番人気はデビッド・ベッカム。そのベッカム様にツバを吐きかける事件が起きた。7月25日に味の素スタジアムで行なわれた東京ヴェルディ対レアル・マドリードの試合のときである。前半なかばに小競り合いがあり「6番にツバを吐き掛けられた」とベッカムが抗議した。6番は戸田である。戸田自身は「覚えていない」と話した。
 スポーツ新聞は、このような話を大きく掲載していたが、一般紙はあまり扱わなかった。しかしベッカムの母国の英国の新聞は、いっせいに報道したという。
 真相は、ここでは追及できないが、関連して考えたことがある。それはこの種の「親善試合」をどう考えるかである。
 タイトルをかけた試合とエキシビションとは違う。エキシビションには、真剣勝負の迫力はなくても、それなりのよさがある。その一つは、スター選手のいいプレーを引き出して、お客さんを楽しませることである。
 30年近くも前の話だがブラジルのペレが「さよならゲーム・イン・ジャパン」と銘打って、東京の国立競技場で日本代表と試合をしたことがある。そのときペレをマークしたのは、メキシコ・オリンピック銅メダルの小城得達選手だった。
 ペナルティー・エリアのすぐ外側で、小城がタックルをした。ペレがそれをみごとにかわしてゴールを決めた。スタンドはペレのプレーに酔いしれた。
 のちになって、小城が話してくれたことがある。
 「あれが、ペレのための試合でなかったら、もっと激しくいってますよ。ファウルになったかもしれないけど…」
 小城の自制のおかげで、ぼくたちはペレの最後の妙技を楽しむことができたわけである。
 今回、来日した欧州のクラブのスター選手たちは、ファンを楽しませるためのショウのつもりだったのかもしれない。それが、意外に真剣な抵抗にあって、びっくりしたのかもしれない。
 誤解のないように付け加えておこう。
 真剣勝負だったら、ペナルティー・エリアのすぐ外で、ファウルで止めてもいいという趣旨ではない。
 タイトルマッチであろうと、ショウであろうと、また、相手がスター選手であろうとふつうの選手であろうと、ツバを吐きかけるなんては論外である。


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