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サッカーマガジン 2004年5月4日号
ビバ!サッカー

ホームタウンのあいまいさ

 Jリーグの「ジェフユナイテッド市原」が「ジェフユナイテッド市原・千葉」となった。これまでは市原市がホームタウンだったが、新たに千葉市を加えた。それにともなう名称変更である。
 「でも」と考えた。「ホームタウンって変えられるものなんだろうか?」
 マンチェスター・ユナイテッドがリバプールに移ったり、ACミランがローマを本拠地にすることはないだろう。クラブ名に地域がついてなくても、フラメンゴがサンパウロへ引っ越すなんて考えられるだろうか?
 プロ野球の場合は、本拠地を移すことが認められている。日本ハム・ファイターズは東京から札幌に移った。米国でも多くの例がある。古くはニューヨークの人気チームだったブルックリン・ドジャースが、西海岸に移ってロサンゼルス・ドジャースになった。
 これはプロ野球の本拠地はフランチャイズ制だからである。
 フランチャイズとは、営業をする権利のある地域である。たとえば西武ライオンズは、埼玉県をフランチャイズにしている。埼玉県で権利を認められているのは1球団だけだから、ライオンズは埼玉県ではプロ野球の営業を独占しているわけである。日本のプロ野球のフランチャイズは、原則として都道府県が単位となっている。
 権利を設定して認めているのは、セ・パ両リーグからなっている日本プロ野球機構である。認めてもらっているのはパリーグに加盟している西武球団という会社である。会社(球団)と地域とどちらが先かといえば会社が先にある。したがって、機構が認めれば、会社は営業の本拠地を移すことができるわけである。
 欧州や南米のサッカーでは、地域の中からクラブが生まれ、そのクラブの中でプロが育った。地域が先にあり、プロチームはあとである。だからリオデジャネイロに育ったフラメンゴを、別の地域のサンパウロに移すのは、考えることもできないのではないか。
 Jリーグの場合は、フランチャイズではなく「ホームタウン」と称している。
 「ジェフユナイテッド」というチームのホームタウンを千葉県の市原市に置いたのは「ジェイアール東日本古河サッカークラブ」という会社だった。つまり会社が先にあり地域はあとだった。だから「地域に密着した」といいながら地域を変更できるのだろう。「ホームタウン」という言葉はあいまいである。
 市原・千葉の場合は単なるホームタウンの変更ではなく、2市にまたがる拡張だった。そこんところは、さらに考えてみることにしよう。


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