大阪は2008年のオリンピック開催を夢見て、腕試しに大忙しである。卓球の世界選手権大会がそうだったし、5月19日からの東アジア競技大会もそうである。運営のなかでいちばんやっかいそうなのはメディア・サービス。2002年の参考になりそうなことはないだろうか?
記者カードの発行
大阪で開かれた世界卓球選手権を見にかよった大きな目的は、メディア・サービスの実態を見たかったことである。それで、卓球の専門誌に原稿を書かせてもらうことにして、プレスのADカードを申請した。
ぼく自身はフリーランスのスポーツ・ジャーナリストのつもりだからそれで申請することも考えたのだが日本ではまだフリーランスに対する理解が十分でない。そこで専門誌を媒体として申請したわけである。申請はちゃんと認めていただけた。ぼくも専門誌にちゃんと原稿を書かせていただいた。「めでたし、めでたし」である。
しかし、サッカーのワールドカップやオリンピックでは、こうはいかない。取材申請が非常に多いので、国別に記者証(ADカード)の数を割り当てて制限する。そうなると誰を認め、誰をはずすかは難しい選択になる。
世界卓球では千人以上の申請があり、それをほとんど認めた。ところがAD力−ドを取りにきたのは半数以下の494人だった。実際に取材したのは、もっと少なかっただろう。
これは「寝た子を起こす」現象である。「取材する人は申請してくださいよ」と触れ回ると、それまでは卓球に関心のなかったところも目をさまして「とりあえず」申請する。しかし、そのあと、また寝てしまうのである。
卓球当局は、それを承知しているから千人以上の申請を認めながら記者席は334しか用意しなかった。それで十分だった。
殺到するメディア
同じ大阪で行なわれる東アジア競技大会でも、多くの記者登録が受け付けられているらしい。日本国内の一つの社から70人もの申請が出ているという。
「開会式は社会部記者が取材するし、国際的なもめごとが起きれば国際部の記者が取材に行く。だから専門のスポーツ記者のほかにも、登録しておく必要がある。というのが新聞社側の言い分なんです」というのが、この問題を担当している大阪市の役員の説明だった。実際に取材にくるのは少数だから、受け付けても支障はない見込みなのだろう。
オリンピックやワールドカップのように、国別に登録の枠を設ける場合は、そうはいかない。枠を獲得しながら実際には取材に行かない者がいると、ほんとうは取材の必要がありながら枠を認められなかった者に対して不公正になる。
目前に迫った日韓共催のワールドカップにとって、これは頭の痛い問題だろうと思う。
というのは、世界中から取材を希望して殺到する記者やカメラマンの数は卓球や東アジア競技大会の比ではないからである。
卓球の場合は、日本以外で記者を送ってきたのは中国、韓国それにヨーロッパの一部だけだった。メダルを狙える国のメディアだけが関心を示していた。
サッカーの場合は、そうはいかない。ワールドカップは世界的関心事である。出場権を得られなかった国のメディアでも、独自の記事を取材して送りたいと希望するだろう。
情報提供サービス
ADカード発行の段階から、ワールドカップではたいへんだと思うのだが、そのあと、たぶん数千人の単位になると思われる取材陣に、宿泊や輸送や取材・通信の設備を用意しなければならない。これが、いっそうたいへんである。
そのなかでも、もっとも大事なのは情報提供サービスである。
世界卓球ではコンピューターによる情報提供も行なわれていた。 国際卓球連盟(ITTF)と大会組織委員会がホームページを開設していて、それで試合記録は迅速簡便に見ることができた。プレスセンターのなかに置いてあるパソコンのうち10台にその時点での勝敗を入れた組み合わせ表だけを取り出せるようにしてあって、これは便利だった。
しかし、選手やコーチの談話や記者会見の内容となると、そうはいかない。ITTFのホームページで見ることはできるのだが、選手数も試合数も多いから、すべてをカバーすることはできない。しかし検索したい情報は、記者によって違うから一部の情報だけでは用をなさない。つまり検索システムはあっても、検索すべきコンテンツが充実していなければ意味がないわけである。したがって、大会当局のほうに、コンテンツを取材して、記事にして、入力する大規模な組織が必要である。
フランスのワールドカップではコンピューターによる情報提供がほぼ完全に行なわれていた。日韓共催の2002年では、フランス以上にやってもらいたいのだが、その準備は進んでいるのだろうか?
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