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サッカーマガジン 1999年12月29日号
ビバ!サッカー

2002年へのスタート
W杯予選抽選会を見る!

 ワールドカップ予選組み合わせ抽選会が、12月7日に東京の国際フォーラムで行なわれた。ワールドカップは、日韓共催の決勝大会だけでなく、大陸(地城)ごとの予選を含めたものである。つまり1999年12月7日をもって、2002年は東京でスタートしたのである。

はなやかだったが
 ワールドカップ予選抽選会は、はなやかで盛大なイベントだった。
 会場の東京国際フォーラムは、東京の有楽町駅前。かつて東京都庁のあったところにできた建物群で外から見るとガラスのお城のようである。国際見本市などが開かれる地下の展示ホールが、メディアセンターと日韓両国の会場都市の展示スペースになった。
 抽選会場は5千人を収容する大ホールだった。4ブロックに分かれているビルの1ブロック4階から8階までを占めている大劇場である。舞台としては超一流だ。
 東京都はワールドカップの会場都市に立候補しなかった。日本の首都にしては情けない話だったが、2002年のスタートラインに会場を提供したので、まだ、多少は許せるかという感じである。もっとも、友人の話では、東京都は「会場都市ではないんだから」と、あまり協力的でないという説もあるそうだ。でも、それは役人の一部のことで、都知事の石原慎太郎さんは一橋大学でサッカーをやっていたんだから、そんな狭量なことはないだろう。
 抽選会そのものは、ただくじ引きをするだけのことだから、内容はどうということはない。
 それを、はなやかなイベントに仕立てるために、いろいろなくふうをして、まずまずの演出だった。テニスの伊達公子さんや元大関のコニシキさんを登場させたのなどが、そのアイディアである。外国人はサッカー関係者だが、日本側はタレントを起用という形だった。

放映権の奇々怪々
 こういう演出はテレビを意識してのことである。ワールドカップ予選の組み合わせは、世界のファンの関心事だから、抽選会の様子は世界にテレビ中継された。そこんところを考えて、日本的な大相撲や歌舞伎のスターにも登場してもらったのだろう。
 そのテレビ中継を、日本ではNHKが衛星放送で行なった。しかし映像を制作したのは、NHKではなくて、TBSビジョンという独立のプロダクションだった。
 「ちょっと変だな。何かあるぞ」とひらめいて、会場で、その道の友人に聞いてみた。 
 果たして…。
 ワールドカップのテレビ放映権は2002年と2006年を合わせ、米国地域を除いて、約2500億円でFIFAが売却している。そのうち2002年の放映権料は1400億円くらいと見積もられている。
 放映権を買ったのは、国際的なエージェントであるISLとドイツのテレビ会社のキルヒの連合体である。FIFAに支払った放映権料は、世界各国のテレビ局に放映させて、その対価をとることで回収しなければならないが、果たして採算が合うのだろうかと他人事ながら心配である。
 ISLとキルヒは、この放映権を売るためにホスト・ブロードキャスティング・サービス(HBC)という会社をフランスに設立している。 
 さて、今回の予選抽選会のテレビ中継は、ワールドカップの放映権のなかに含まれていた。したがって、その放映は、2002年の大会を放映するところが行なうのが筋である。

裏側はいろいろ
 ところが、2002年ワールドカップのテレビ中継を、日本でどう行なうかはまだ決まっていない。
 日本側はNHKと民放各局が連合して作る「ジャパン・コンソーシアム」で引き受けたいと思っている。制作するのはNHKと民放各局の連合体、国内で放映するのもNHKと民放各局連合でというわけである。各局が争って権利金が釣り上げられるのを防ごうという戦略である。
 この交渉は難航している。
 日本国内での放映権料250億円前後の攻防という話だが、これまでの常識からは法外な金額である。
 そういう難しい交渉のさなかだから、その放映権料に含まれている抽選会の中継の制作をNHKも他の民放も引き受けることはできない。
 というわけで、中継の制作は、独立のプロダクションであるTBSビジョンがHBCと契約して引き受けたのだそうである。
 TBSビジョンが制作した映像は世界のテレビ局に提供される。だが日本では、どの局が放映するのだろうか。
 放映権料交渉中の事情からいうと、どこも放映するわけにはいかない。といって、日本でのイベントを国内でブラウン管にのせないわけにはいかない。そこで、最後の段階でNHKがBSで放映することになった、というのが、ぼくが友人から仕入れた知識である。
 そういうわけで、はなやかな抽選会の裏側には、いろいろな事情がある。こういう問題を、もう少し突っ込んで調べてみたいと思っている。


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