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サッカーマガジン 1997年4月23日号

ビバ!サッカー

Jリーグの前期を占う

 5年目のJリーグ、また2シーズン制に戻って優勝争いの焦点が定めにくい。戦力は平均化してきているうえ、どのチームもプロの戦いに慣れてきて、優勝争いは混戦だと考えられるだけに、カギを握るのは監督の力量。前期はチームになじんでいない新監督には苦しい戦いになる。

☆上位チームは横並び
 Jリーグも5年目を迎えて上位チームの戦力は横並びになってきた。ブロの考え方が浸透して、一つのチームに優秀なプレーヤーが偏るようなことはなくなったからである。
 プロになれば、プレーヤーの移籍が盛んになる。
 第一に、レギュラーからはずれそうなプレーヤーは他のチームでのチャンスを狙って移籍を要求する。それでトレードが活発になる。
 第二に、クラブは高い給料のプレーヤーを必要以上に抱え込むと経営が破綻するから、実績があっても給料が高すぎるプレーヤーは若手と入れ替えようとする。だからチームの抱えているプレーヤーの力量の総計は平均化してくるわけである。 
 もう一つ、外国人選手の問題がある。Jリーグ発足当初は、フロントに国際的な経験のない人たちが多かったから、外国からのプレーヤーの採用に見当違いなことを繰り返していた。 
 端的にいえば、外国の事情を知らないうえにツテもないから、間に立つエージェントの言いなりになって、国際的な相場からみて法外な金額を支払っていた。おかげで超有名選手が日本へ来てJリーグ・ブームを盛り上げたが、日本のサッカーと折り合わなかったり、ケガを持っていたりしてクラブは大損をしたケースもあった。 
 しかし、それもようやく落ち着いてきて、外国人プレーヤーの値段も落ち着くべきところに落ち着いて、本当に役立つ外人選手を、どのクラブでも取れるようになりつつある。

☆ものをいう監督の力量
 チームの力が、みな同じようなものになってきたとき、ものをいう要素が二つある。
 一つは、チームの中に、強力なリーダーシップをとるスーパースターがいるかどうかである。11人の力の総計が同じ場合、傑出したプレーヤーがいるほうが強いことはサッカーの常識である。
 いまのJリーグには、これに当てはまるスターはいない。つまり、古き良き時代のブラジルのサントスにいたペレや、バイエルン・ミュンヘンにいたベッケンバウアーに相当するような人材はいない。ヴェルディのカズも、アントラーズのビスマルクも、そういうタイプではない。
 しいていえばグランパスのストイコビッチだ。ストイコビッチは、ユーゴスラビアのワールドカップ予選のために、何試合か不在になるという話だが、それがなければ名古屋を優勝に導く人材である。
 もう一つの要素は監督である。手駒の力量が同じであれば、指揮官の手腕がものをいうのは当然だ。
 17チームのうち15チームは外国人監督。いずれも世界で実績を残している人物である。ただ新しく就任したばかりの監督に、いきなり大きな期待はかけられない。そこのところを考えれば、日本である程度の経験を積んだ監督が有利だ。
 鹿島アントラーズのジョアン・カルロス、横浜フリューゲルスのオタシリオ、柏レイソルのニカノール、清水エスパルスのアルディレス、ガンバ大阪のクゼ、アビスパ福岡のパチャメ、ヴィッセル神戸のバクスターである。

☆鹿島が本命、柏に期待
 この中では前年度優勝の鹿島アントラーズが、もっとも信頼できる。
 なにしろ背後にはJリーグを知り尽くしているジーコが、総監督として控えている。名声、実力、実績と三拍子揃っている。
 レイソルのニカノール監督にも期待したい。もともと、いまのベルマーレの前身であるフジタのヘッドコーチとして業績を残している。1994年度の天皇杯でベルマーレを優勝させたあと、次のシーズンの途中に、どういうわけかベルマーレをクビになった。前年、再び日本に来てレイソルの監督に就任、最終成績は5位だったが、一時は優勝争いに加わった。
 新監督にいきなり期待するのが難しいのは、自分のチームをよく知らないし、Jリーグのことも、よく知らないからである。
 その点では、ヴェルディの加藤久監督にはハンディはない。もともとヴェルディの選手だし、日本のサッカーを知り尽くしている。 ただし監督業はまったく新しい経験である。Jリーグに2人しかいない日本人監督として、ベルマーレの植木繁晴監督とともにがんばって欲しいところだが、前期は大きな期待をかけすぎないようにしよう。
 優勝争いに加わるには、戦力的にいま一歩だろうが、アビスパ福岡のパチャメ監督にも注目している。新監督といっても、日本サッカー協会の依頼で若手育成を担当した経験があり、アビスパでも昨年はヘッドコーチだった。Jリーグの監督としての力量を見てみたいものである。


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