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サッカーマガジン 1995年2月22日号

ビバ!サッカー

続・ごちゃまぜサッカー

 指導者が熱心すぎて、手取り足取り教えすぎる。そのために、生徒たちは自分でくふうして、やることを忘れ、自分自身のアイディアを伸ばせない。これはサッカーだけでなく、日本の教育全体の問題だと思っている。「ごちゃまぜサッカー」は、その対策の一つである。

☆クロッキー・ゲーム
 2週前の号に「ごちゃまぜサッカー」の勧めを書いたら、さっそく友人から反応があった。
 「あれは、むさしのFCの実用新案じゃないぞ。もともとは…」
 分かってる、分かってる――。
 実は「ごちゃまぜサッカー」が、もともとオランダから始まったもので、クロッキー・ゲームという名で呼ばれていることは知っていた。
 オリジナルは「ごちゃまぜサッカー」というネーミングである。
 そして、その名のもとに公式に? 大会を開いて、入賞者にトロフィーまで授与したのは、日本で初めてであろう、と思ったわけである。
 友人によると、クロッキー・ゲームは、2年ほど前に日本に紹介され、コーチのための専門的な雑誌に、ドイツの文献が掲載されたことがあるらしい。
 また日産(マリノス)のトレーニングの本に載っていて、神奈川県のトレセンでも使っているという。
 では「クロッキー」という呼び名の由来は何なのだろうか?
 実は、これがオランダ起源だということを聞いたので、いま新潟で指導している元ヴェルディ・ヘッドコーチのフランス・バルコムに聞いてみたことがある。
 「やり方は知ってるよ。クロッキーは、ドイツの会社の名前じゃなかったか。そこがスポンサーになってたんじゃないかな」
 バルコムの記憶も、かなり、あやふやだった。
 このゲームの正しい知識をお持ちの方がおられたら、ぜひ、ご一報いただきたい。

☆いろいろなゴールで
 さて「ごちゃまぜサッカー」ことクロッキー・ゲームのやり方を、改めて説明しよう。 
 4人対4人くらいの少人数のゲームを、小さなフィールドで同時に何度もやる。試合ごとにメンバーをごちゃまぜにして入れ替える。試合ごとに、勝った方のチームのプレーヤー全員に1人10ポイントを与える。それに、そのチームのあげた得点を、さらに加える。たとえば3対0で勝てば、勝った方のチームのプレーヤーは、全員がそれぞれ13ポイントもらえるわけである。 
 このようにして、数試合やったあと、それぞれのプレーヤーが自分の得たポイントを合計し、いちばん多い者が優勝する仕組みである。 
 この説明で、よく分からない人は2号前の「ビバ!サッカー」を合わせて読んでいただきたい。
 1チームの人数やフィールドの大きさは、いかようにも調節できる。 
 問題はゴールである。 
 むさしのFCの大会では、ハンドボール用のゴールを、たくさん調達できたので助かったが、一つの会場に同じ大きさのゴールを、たくさん用意することは難しい。 
 「いや、それは」 
 と友人が教えてくれた。 
 「別に同じ大きさのゴールを揃えなくてもいいんだよ。サッカー用、ハンドボール用、ホッケー用、あるいは体操の平均台なぞ、なんでもいい。試合ごとに、いろんなフィールドを、ごちゃまぜに回るんだから結局は公平になるんだ。それが、かえっていいんだよ」

☆兵庫女子短大の実験
 むさしのFCが大会を開く前に、ぼくの勤めている短大の体育実技でも「ごちゃまぜサッカー」を試みた。ここでは、グラウンドの隅に放置されていたホッケーのゴールを使った。人数は、その日の出席者の都合で5人対5人だったり、6人対6人だったりした。
 はじめる前に頭を悩ませたのは、メンバーの振り分けである。
 10分ごとにメンバーを組み替えて試合をしたのだが、同じ顔触れが繰り返されないようにするには、どうすればいいだろうか?
 高校のときの数学を思い出して、順列、組合わせに頭をひねったりしたが、実際にやってみると、なんでもない。適当にメンバーを入れ替えても、同じ顔触れになる心配は、ほとんどない。
 むさしのFCでは、80人を赤ゼッケン組と黄色ゼッケン組に分け、それぞれ1番から40番まで番号を付けて、乱数表を使って試合ごとのメンバーを決めていた。
 そういうふうにして、むさしのFCでも、わが元気いっぱいの兵庫女子短大でも「ごちゃまぜサッカー」は大成功だった。とにかく、みんな楽しそうだった。 
 監督、コーチは進行係に徹していればいい。メンバーが、ごちゃまぜに入れ替わるのだから、チーム作りに口を出す余地はない。
 プレーヤーが、それぞれ自分のアイディアでプレーする。それによって個性を伸ばし、やる気を出す。
 それがいいところである。


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