アーカイブス・ヘッダー

 

   
サッカーマガジン 1977年5月25日号
時評 サッカージャーナル

新しい少年サッカー大会

チビっ子チーム全員集合
 さる4月2日に全国各都道府県の少年サッカー担当役員が東京で会議を開いた。「全日本少年サッカー大会全国実施委員会」というのが、その会議の名前である。
 全日本少年サッカー大会――そんな大会があったっけ? こう思う人がたくさんいるに違いない。
 そう、これは今年からスタートする新しい大会である。参加できるのは「13歳以下(小学生)の単独チーム」つまり日本サッカー協会の第四種登録チーム、ということになっている。
 少年サッカーのチームを作っている人は、4月の末までに各都道府県のサッカー協会に登録して、この全日本少年サッカー大会に参加申し込みをしていただきたい。
 各都道府県ごとに大会をやり、また地域によってはブロック大会をやる。そのうえで勝ち抜いた32チームが、8月1日から6日まで東京の郊外にある「よみうりランド」のサッカー場に集まって全国大会――という計画である。
 参加した全国のチームの選手には記念のバッジと、サッカーの歴史、技術、ルールを解説した美しいハンドブックを差し上げることになっている。こんな「オマケつき」のPRまでするのは、余計なことかもしれないが、これはこの大会の趣旨と関連することなのでちょっと付け加えておきたい。
 というのは、この大会は日本一強いチビっ子チームを決めて優勝トロフィーをあげることだけが目的ではなくて、1人でも多くの少年たちにバッジとハンドブックをあげることのほうに、より多くの重点がかかっているからだ。つまり全国のすべての少年サッカー・チームに参加してもらおうという「普及」のための大会である。
 ところで先に「新しい大会」だと書いたが、実は昨年まで10年間にわたって、同じ年齢層のための全国サッカー少年団大会が、毎年、夏休みに開かれていた。この少年団大会に代わって全日本少年サッカー大会が開かれることになったもので「名称が変わっただけ」ということもできる。神戸や静岡県の清水のように熱心で力のある指導者が少年サッカーをしっかりと組織化しているような地方にとっては、確かにこれは「名称が変わっただけ」である。なぜなら、こういう地域ではスポーツ少年団はほとんど大部分が少年サッカー・チームであり、逆に少年サッカー・チームはみな“スポーツ少年団”として登録されているからである。
 ところが実に残念なことに。多くの地方ではそうではなかった。
 たとえば東京都では昨年の少年団大会の東京大会に、たった18チームしか参加していない。もちろん人ロ1000万以上の東京に少年チームが18しかないわけではなくて、夏休みや冬休みには、少なくとも100以上のチームが、都内のあちこちで試合やら大会やらをやっている。ただ「少年団」として登録しているチームは18に過ぎず、したがって少年団大会の申し込み用紙もそのチームにしか配布されなかったという実情らしい。
 「これではいけない」とぼくも思う。そこで「少年サッカー・チームはみんな日本サッカー協会のカサの下に集まって、同じ仲間になろう」という趣旨で少年団大会を衣替えしたわけである。「チビっ子サッカー、全員集合」である。 

「少年団」との関係
 そういうしだいで、今回の大会の参加資格は「スポーツ少年団」に限られていない。町の少年サッカー・チームも協会に登録して、参加申し込みをすれば出場できる。
 このことは、4月2日の会議でかなり議論になった。スポーツ少年団の組織は、各地の体育協会や教育委員会と密接な関係をもっている。だから「スポーツ少年団」の大会にしたほうが、やりやすいことが多い、というのである。
 これはもっともなことで、だからこそ従来は「少年団大会」として開かれていたわけである。しかし建前だけをいえば「少年団」だけを対象にした大会は「官公庁大会」や「自衛隊大会」と同じように特殊なグループのための大会であって、サッカー協会加盟チーム全部のための大会とはいえない。
 今年から協会のチーム登録が年齢別になった。そこで第一種のおとなのチームのために天皇杯があるように、第四種登録の少年チームはどのチームでも参加できる大会を開くことにした。そのために「少年団」の大会ではなくなったという筋道である。
 だからといって、スポーツ少年団とは縁を切るわけではない。官公庁や自衛隊とは違って、スポーツ少年団の組織には、だれでも加わることができる。したがって少年サッカー大会に参加するチームは、ぜひともスポーツ少年団としても登録するようにおすすめしたい――4月2日の会議の結論は、およそ以上のようなものだった。
 いいかえれば、従来は「少年団」以外には門を閉ざしていたのを、すべての少年チームに開放して、はいってきたチームに「少年団」への加入を奨励する形になるだろう。
 全日本少年サッカー大会は学校単位の大会ではないが、一つのチームが一つの小学校の生徒で構成されていてもいい。一方、二つ以上の小学校の生徒で作っているチームでもかまわないし、逆に一つの小学校の生徒で作っているチームが二つ出てきても差し支えない。
 ただし、1人の選手が二つ以上のチームから登録することはできない。また原則として同じ市町村内の子供たちによる“単独チーム”に限り、“選抜チーム”では参加できない。
 大会の趣旨は、およそ以上のとおりである。ほかに多くの問題点がないわけではないが、ここでは趣旨の説明だけにして、読者のご批判を待つことにしたい。


前の記事へ戻る
アーカイブス目次へ

コピーライツ