総額3億円の国際大会
「世界の強豪集め“賞金トーナメン卜”」「78年3億かけて第1回大会」
さる11月11日付の東京のサンケイ・スポーツ新聞に、こんな大見出しで、1ページのほとんどを埋めた大特集が載っていた。日本で招待国際大会を開く計画があるという話である。びっくりした読者もいただろうと思う。
実をいうと、この大構想が表面化したのは、サンケイ・スポーツの記事が最初ではない。
9月18日の日本サッカー協会理事会で岡野俊一郎理事が、そういう計画の持ち込まれている経過を報告し、翌日付の報知新聞には記事になっていた。読売、朝日、毎日などの一般新聞紙上に載らなかったのは、いまのところ、ちょっと夢のような話で、実現の可能性が、はっきりしないためだろうと思われる。そこで、報知やサンスポの記事を読まなかった読者のために、この計画を紹介すると、あらまし次のようである。
このプランは、日本でもっとも大手の広告会社から協会にもち込まれたものらしい。最初は、16チームによる国際大会を日本で開こうという案だったようだ。しかし「いきなり16チームを集めるのは困難」ということで、岡野理事が報告したのは、8チームの国際大会を6月ごろに開くという案だった。
8チームのうち2チームは、日本代表のAとBである。残り6チームを外国から招くことになる。ヨーロッパから3チーム、南米から2チーム、アジアの国から1チー厶というふうである。ヨーロッパと南米からくるのは、プロの単独クラブになるだろう。
さて、この8チームをまず4チームずつに分けて総当たりのリーグ戦をする。一方のグループは東京地域で、もう一方のグループは関西地域で試合をするというのも一案である。
2つのグループの上位2チームずつが準決勝に出る。一方のグループの1位が他方のグループの2位と当たる組み合わせである。そして、その勝者同士が決勝を争う。
参加チームには「1試合につきいくら」でギャラを払う。ここがこのプランのユニークなところだ。
たとえば1試合するごとに、1チームに400万円支払うとする。1グループ4チームの1次リーグで、どのチームも3試合ずつすることになるから、参加チームは少なくとも1200万円は保証されることになる。
準決勝に進出すれば、さらに400万円もらえる。決勝に出ればもう400万円加わる。つまり決勝に進出したチームは、合計2000万円を受け取ることができるわけだ。
このプランを実行するには、もちろん、たいへんお金がかかる。
外国から招く6チームの航空運賃は、団体料金でおおざっぱに見積もって4000万円くらいになりそうである。大会期間を2週間として外国チームの滞在経費も、ほぼ4000万円くらいは覚悟しなければならない。
このほか日本の2チームにかかる費用、ナイター料金をふくむ会場使用料、運営費などを加えて、総額およそ1億〜1億2千万円。前述の参加チームへのギャラの総額1億2千万円と合わせて、全部で2億4千万円は必要だろうと思われる。それにプラス・アルファで総額約3億円を、入場料収入とテレビの放映権料でまかなわなければならないわけである。
財政的なメドは?
そこで第一の問題は、はたしてそれだけの資金を集めることが可能かどうかである。
1次リーグの12試合に平均1万人ずつ、準決勝2試合に2万人ずつ、決勝戦に4万人の観客を集めることができたとして、入場者の延べ人数合計は20万人。入場料金を平均1000円とみても入場料収入の総額は2億円になる。とらぬタヌキの皮算用ではあるが、まるで話にならない夢のような数字ではないようだ。
このほかにテレビの放映権料がある。これがどれくらいになるかは、ぼくにはちょっと見当がつきかねるのだが。これだけの大企画であれば、15試合全部の放映権料の総額が1億円以下のようでは、やる価値がないような気がする。そういうような計算で、計画そのものに実現性があれば、財政的にメドが立たないわけでもないようだ。
ぼくが聞きこんだ情報では、このプランをもち込んだ広告会社は、すでにテレビ局のほうにも打診をしているということである。それも一つのテレビ局ではなく、複数のテレビ局にお願いしようというアイデアだそうだ。新聞社の後援事業では、読売、朝日、毎日の3社が共同で後援した例もいくつかあるが、テレビ局でそういうことが可能なものかどうか、ぼくは門外漢でわからない。
そこで、そういう話をテレビの仕事をしている知人にしたら、その人はスポーツの担当者ではないのだが「ふーん。優勝賞金1億円のサッカー大会なんていうのだったらおもしろいな」といっていた。案外もともとの発想は、そのへんなのかもしれない。
ところで大会の名称だが「日本カップ」というのは仮の案である。以前に日本航空をスポンサーにして「JAL(ジャル)カップ」をやろうという話があり、そこから発展して出てきた名称のようだ。大会の時期は、来年6月では外国との交渉が間に合いそうになく、実現するにしても明後年以降ということである。
以上がだいたいのあらましである。このプランには賛成かどうか、ここでは、ぼく自身の意見を書くのを差し控えて、読者の皆さんの考えを聞かせてほしいと思う。
|