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サッカーマガジン 1972年1月号

まずアジアのタイトルを!
長沼新監督にきく              (2/2)   

■ 選手諸君にほしい集中力
―― ムルデカ、アジア大会は、公式タイトルだから、どうしてもとりたい。あるいは74年のモントリオールの大会があって、予選がある。それじゃあ、新年度のメンバーは、どういうのでいくか、ということですが……。

長沼 その時点で16、17歳の選手がおるというのが理想なんですね。最強チームにはいないけれども、その次には入っているべきだ。つまりタイトルをとるためには、どうしてもベストでいくべきだ。しかし、12番目、13番目のものが、日ならずして11人を追い越すとか、そういう競争が必要じゃないですかね。安心のほうを重く見て、ベテランを大事にキープしていこうということだと、若いものが出る余地がな<なります。

―― 12番目、13番目というのは、試合に出る余地があるわけですね。今まで大学を卒業するとナショナル・チームに入りますね、それを大学のうちに使ったらいいじゃないかという意見がある。

長沼 ええ、東京オリンピックのときには、いっぱいおったでしょう。小城、釜本……ね。それが、卒業していなくなるとか、こなくなるから……。

―― 入れないんじゃないですか。

長沼 これは大学委員会でよく研究しなくちゃいけない(笑)。

―― ところで、そういう目標で、実際にどのようにしたら取れるか、その抱負を聞かせてほしいんですが……。

長沼 これはもう、単なるナショナル・チームだけの問題じゃなしにですね。彼らは1年のうち10カ月はチームにおります。1カ月くらい代表チームに出てくる。10対1ですよ。その間に何をやっているかという問題がいちばん大きい。今までも無視したわけじゃない。八重樫君、平木君がやってきているんですが、それをもっと煮詰めていかなくちゃいけないと思います。
 今の日本リーグ、大学リーグを見て、いちばん欠けているものは何かというと、テクニックとかいろいろあるけれども、第一は集中力です。シーズンに入って終るまで、その期間をどこまで集中してやっているかということだと思うんです。1週間<らい神様みたいな生活をしてみても、ふだんそういうことでやっていないとまずい。だからこの点、日本リーグの各監督さんにもお願いしてやってほしいし、選手諸君にも、そこを理解して努力してもらわないといけない。そう長い間のサッカーじゃないですからね。そこから試合中の集中が出てくると思いますね。しばしば、ずいぶんのんびりしているじゃないか、というプレーが出ていますからね。これは平生がそのまま出るんです。代表チームに入ったらやるよというわけにはいかない、平生が大事ですよ。

―― 新年度のスケジュールはまだ決ってはいないでしょうが……。

長沼 さっきいった日程の整理というのが大問題なんで……。4月開幕としたら、3月以降はチームにおいときたいという気持、これもよく分かるんです。日本リーグをより充実した形でやるためにはですね。天皇杯以降はオフシーズンなんですから、その直後に大きな試合をやったらいい。2月には各チーム動き始めるのだから、2月中旬から3月初めくらいに強化合宿をやるとか、アジア遠征をやるとかですね。これは短期間にパッパッと試合やって帰ってくればいい。
 開幕したら、途中でカットして引っ張り出すようなことはやめたい。そして終了をまって、国立競技場が使えるかどうか、これがネックですが、強いチームを呼んで試合をやる。そして、秋の開幕までは代表チームの強化に使うわけです。この間に遠征が入る。それから、秋のリーグに入りますね。始まったらもう、天皇杯まで何も入れないということですね。9月の初めに、もう一つ強いチームとやってもいいが……。だからパッパッと出たり入ったりするのはやめよう、そうなれば、会社もホーム・チームも基本計画が立てられるんじゃないですか。

―― なるほど、強化合宿は何人くらいでしよう。

長沼 いいところ35人くらいじゃないですか。毎日毎日、練習と並んで猛烈に試合をやる。必ず若手が出てきますよ。そうしたらそれを、次のスケジュールに組み込んでいく。そうすれば、選ばれたほうも自信が持てるし、従来のメンバーも納得というか、やつはやれるんだという気持になるわけで、なんだあれは、抜擢されるけれど、キャリアはあるのかって(笑)そんなことじゃだめなんですよ(笑)。
 そのほかにゴールキーパーを集めて強化をやことも考えています。これは元キーパー下村(元東洋)、保坂(元古河)、生駒(元三菱)とか、ああいう指導者に集まってもらって特訓ですね。

―― おもしろいですね。ぼくはヤシン1人を呼ぶというようなのは実現しやすいと思うし、ファンも喜ぶと思いますが。

長沼 そうですね西ドイツのネッツァーが自分1人でフリーできて、代表チームでも何でもいい。中に入ってプレーすることが、みなさんにとってプラスになるとすれば、自分はいつでもくるよ、ということをいっておったですよ。それは一つのアイデアでしょうね。

■ 強化したいポジション
―― ポジションから見て、日本でいちばんふんばってもらいたいのは……。

長沼 まず、ウィング、これにもっと人を得たいですね。10回ボールをけったら、ほぼ同じところへ落ちるセンタリングのできるものがほしいですね。三菱の高田とか、あれで正確なセンタリングができるようになったら大勢力ですよ。ただ早いだけ、抜けるだけじゃつまらない。そういう面の強化が必要です。おれにはこういう仕事ができるという、そういう面ですね
 それからリンクマン。吉村、宮本輝、山口君にしても、リンクマンの中で攻撃的なものはわりにいるんですが、守備的なリンクマンがいないんです。一時期森君がやっていた、ああいう仕事をやるものが、もっとふえなきゃいかんと思いますね。だから攻撃的リンクマンが、もっと守備力を身につけてほしいし、それが円滑になったら、日本のチームワークはもっとみごとになると思いますね。
 あと守備ラインとしては、やっぱり空中戦が問題になりますね。簡単にタッチラインやコーナーに逃げることは、得点に結びつく可能性がある。安全第一ですが、もっと危険を冒して持って回ってけり返せとはいわないが、それほどでもないのに出しちゃうのが、ずいぶんある。

―― バックは足が速くて、背が高くてと欲張った要求の多いポジションですが、今、日本で有望なバックというと……。

長沼 荒井あたり有望ですね。それに新日鉄の三浦、あるいは木村。あのへんものしてきたですね。彼らががんばってくれなくちゃいけないですね

―― それとゴールキーパー……。

長沼 日本中から集めて特訓をやる機会を作りたいですね。横山、船本のあとに瀬田。瀬田はいいものを持ってますね。性質もいいし努力家だし、あれが大きな試合で自信をつけてくれれば、先輩を上回るときが必ずくると思いますね。

―― かなり経験がものをいうポジションだから、チャンスを与えないと若いキーパーは伸びないと思いますね。

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