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サッカー列島改造論 (2/2)
(サッカーマガジン1972年10月号)
 


日本にもプロが出来るか
 
 このように、外国ではプロ・サッカーが、“25万都市” を拠点にしてワイドに広がり、ワイドにつながっています。そこで問題は、この外国のサッカーのような組織が、田中首相の日本列島改造論に乗って、日本にも出来てくるだろうか、ということです。

 現在、日本のサッカーの全国リーグは、プロではありませんが、日本サッカー・リーグとして組織されています。今年から2部リーグが出来て1部8チーム、2部10チームです。来年からは2チーム増やして、1部10チーム、2部10チームにすることになっています。

 将来、1、2部合わせて一つのリーグになるか、あるいは、1部、2部ともチーム数を増やして、それぞれ16チームずつくらいになるかはわかりませんが、いずれにせよ、全国リーグのチーム数は増えていくことになると思います。

 その場合、日本リーグの全チームが東京、大阪に集中するようでは仕方がない。中央の過密と地方の過疎を解消していこうという日本列島改造の時代に、そういうことでは、時代に逆行することになります。ここはどうしても、サッカー列島改造で、強いチームを地方に育て、日本リーグをワイドにしなくてはいけません。強いチームの中央集中を防ぐ対策が必要になるでしょう。

 「そんなに地方チームにたくさん入られたら、日本リーグは遠征に時間と金がかかり過ぎて、やっていけなくなるんじゃないか」と、そんな疑問を持つ方がいるかも知れません。しかし、田中首相は近い将来に、日本列島は全部 "一日生活圏" の中に入るというのです。

 いま、東京と大阪は新幹線で3時間10分です。私は午前中に東京を出て、午後、神戸でサッカーの試合を見て、原稿を書いて、夜は東京に帰っていることもあります。
 東京−大阪は、すでに1日生活圏に入っています。近い将来、日本リーグに入り得るチームの本拠地をあげてみましょう。北から札幌、仙台、東京、横浜、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡あたりはどうでしょう。ほかに甲府や四日市のような都市もあります。

サッカー列島改造論2 いまあげたのは太平洋岸の都市ですが、田中首相の日本列島改造論は、将来は “日本海時代” だというのですから、秋田、新潟、金沢、富山、福井などもあげなくてはなりません。実際に、ソ連や朝鮮民主主義共和国の日本海側の都市と、これらの都市が日常茶飯事のようにサッカーの試合をする時代が、すぐ来るに違いないのです。いや、すでに計画をたてている都市もあるのです。

 経費の問題も、大きな視野でみれば、それほど解決困難とは思われません。日本は間もなく、アメリカにつぐ経済大国になるだろうといわれているのです。西ドイツやイギリスで成り立っている全国リーグが、日本で出来ないはずはありません。


地域のクラブを開発しよう
 
 このような地方都市のチームも将来プロになるのでしょうか。

 結論から申し上げれば「その通り」です。日本リーグでやるようなチームは、強くなくてはいけません。仕事の余暇にやるアマチュアよりも、本業でやるプロの方が強いのは当然です。だから将来は日本リーグに出場する選手は、原則としてプロになるでしょう。
 ただし、サッカーのプロは、野球のプロとはやり方が違うのだということを、おぼえておいていただきたいと思います。

 いま日本のプロ野球は12球団ありますけれども、巨人以外はみな赤字です。だから、たとえば東北の仙台に、新しいプロ野球の球団を作るのは、なかなか困難でしょう。しかし、私はサッカーのチームなら出来ると思う。それは組織のあり方が、まったく違うからです。

 どう違うかといえば、まず第一に、野球ではプロとアマは、まったく別ですが、サッカーでは、プロとアマが一つの組織の中にいます。プロもアマも、同じサッカー協会に加盟していて、プロとアマが試合をすることも出来ます。先ごろ来日したブラジルの"サントス"は世界的に有名なチームで、選手はペレをはじめ、みなプロですが、アマチュアの全日本と試合をして、なんの支障も弊害もありません。

 第二の相違点は、プロ野球の球団は興行団体ですが、サッカー・チームはスポーツ・クラブに属しているということです。

 ドイツや南米などのラテン系の国、あるいはソ連などの社会主義国でもそうですが、こういう国のスポーツ・クラブは、サッカーだけでなく、いろいろなスポーツをやっています。またサッカーのチームも一つでなく、プロ、アマチュア、ジュニア、ユースなど、いろいろあります。

 そればかりではありません。サッカーでは一つのチームの中で、プロとアマチュアが一緒にプレーすることが出来ます。プロ野球の巨人軍で長嶋はプロ契約をしているが、王選手は「ぼくはお金はいらないから」といえばアマチュアのまま野球が出来るというような組織です。

 こういう組織には、利点があります。まず選手にとっては、プロ選手をやめても、サッカーを続けることが出来るし、別に仕事を持って試合しながら、プロ契約をするチャンスをうかがうことが出来ます。またチームの方からみれば一流の選手には十分の金を払ってフルタイムのプロとして契約し、二流の選手はパートタイムで使い、将来性のありそうな選手は、アマチュアとして使ってみるというやり方が出来ます。したがって経済的に選手と契約できます。

 たとえば、仙台にチームを作ろうとすれば、まずアマチュアのクラブからはじめて、一部がパートタイムのプロとなり、しだいにフルタイムになるというように進んでいくだろうと思います。

 このようなスポーツ・クラブはなによりも、その地域に密着したものでなければなりません。またチームの入場料収入は、アマ、プロを問わず、その地元のクラブのものにならなければなりません。そのほか、いろいろな条件が考えられるわけですが、今回は余裕がないのでサッカー列島改造のための大前提は、「地域に密着した、25万都市のスポーツ・クラブを開発することである」とだけ申しあげて、終わりと致します。(了)

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