【座談会】
アジア大会に日本はいかに戦うか (3/4)
(サッカーマガジン1966年12月号)
■ 暑さと食べ物
浅見 ベスト・コンディションで臨めぱまず勝てると思うんだが、心配なのは、気候的に、日本が寒くなったところで暑いところに行くということね。
岡野 その点はぼくは、あんまり心配していないんだ。みんなもう、そういう経験はいままでに十分積んでるから。
牛木 暑さはどうかな。東南アジアヘみんな行ったことがあるわけだけど。
岡野 でも、12月ころのバンコクというのはそれほどでもないでしょう。暑いのは日中だけで。
浅見 ナイターだろう。
岡野 いや、ナイターじゃないのもあるよ。4時半と7時だから。まあ12月は一番乾燥してる時期だし、ぼくはあんまり心配してないんだけどね。
高橋 初めのころはやっぱり閉口しましたよ。第1回のユースに行ったときね。暑さでまいっちゃって、毎日々々ジュースで命つないでるのがいるくらいだから、戦力になりっこないです。そういう意味で長い期間いたら損は損だね。温度の差が激しくて夜寝られないとか、暑さのために水を飲むからものが食べられない。行ってしばらくたつとだんだんまいってくるわけです。でもなれてきたら
―― 杉山なんかはもう何回も行ってるんだからね。日本よりもあっちのほうがなつかしいくらいのものだ。(笑)
浅見 サイゴンとバンコクが、どのていど違うかわからないげれども、12月にサイゴンに行ったときはそう暑いと思わなかったですね。最後ナイターになったら、涼しいという感じさえしたくらいだから。
岡野 ただ日本が寒くなりかかったところで行くんだからね。そういう点で急に順応できないもの、一つのハンディはあるね。
高橋 あんまり早く行き過ぎてもいけないし、そうかといってあるていど順応もできなきゃ。試合のどこにトップ・コンディションで当たるか、そこが岡野君の腕だ。
岡野 今度は飛行機の関係で行くのが早いんだ。3日に出発だから。
高橋 サッカーはなれてるからということだろう。(笑)
浅見 食いものに関してはどうかしら。
高橋 いまの一軍の選手はなれてるからね。変な果物を喜んで食うと下痢するくらいのことは承知してるだろう。
牛木 ムルデカのときは、食いものはどんなものだったの。
浅見 それはやっぱりチャイニーズ系統だね。油をすごく使うから、あの臭いかいだだけでも食えないというのがいるんだ。しかし今度は本番なんだから、とにかく食えないものがいたら食料を持っていくとか、工夫したほうがいいだろうね。食えないものをがまんして食うことはちょっとできないから。
■ 観客は不利な条件じゃない
牛木 食べものと暑さという不利な条件を二つあげたけど、お客さんというのもちょっと不利なんじゃないかな。
岡野 いや、そんなことないよ。
浅見 タイとやらない限りは、わりと応援するんじゃないかな。
牛木 高橋さんがジャカルタヘ行ったときに、バカヤローなんていわれたそうじゃないですか。
高橋 それはしょっちゅうだよ。中にはニコニコしてバカヤローといってるのもいるからね。(笑)
知ってる日本語を使おうということなんだ。
浅見 バンコクは、目本に対する感じはいいんでしょう。
岡野 うん。ぼくらが入ってったらまず声援はアジノモトだな。
浅見 シンガポールヘ行ったらヤマハ、ホンダ、スズキなんて。(笑) それからシンタローが出てくるよ。勝新太郎ですよ、「座頭市」の。(笑)
岡野 試合やってるとシンタローッといわれるから、まいっちゃうよ。
牛木 じゃあタイとやるときのほかはだいたいにおいて、お客さんは日本の味方と考えていいな。
高橋 昔の東京での韓国戦よりはいい。
■ 審判作戦は……
牛木 審判のほうはどうかね、向こうの審判。
岡野 まあ今度はアジア大会ということで各国のトップ・クラスがくると思うけど、やっぱりアジア地区の審判というのは、そううまくないと思うな。
牛木 日本にとって不利なところはあるの。
浅見 具体的に不利というと、そう直接的な不利という面はないんじゃないかな。ただ一つ、割と荒いサッカーというか、きたないサッカーをする国が幾つかあるから、そういうところとやるときに、どういう審判に当たるかというのは多少あると思うんですがね。しかしだいたい審判の顔ぶれもわかってるから、あの審判だったらこうというのは、多少わかるんじゃないかな。
牛木 作戦立てられるか。(笑) 審判作戦。
浅見 うん。全くの新顔というのはそういないと思うな。
岡野 だからぼくも今度ムルデカでも、相当審判員といっしょに飲んだり食ったりしたし。(笑)
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