FIFA
Club World Cup Japan 2006
◆見どころ多かった決勝戦◆
(12月17日、インテルナシオナル 1−0 バルセロナ)
★ブラガ監督の作戦成功
クラブ・ワールドカップの決勝戦は、スター軍団のバルセロナ有利という予想だった。しかし、インテルの作戦と闘志による勝利も十分に考えられた。そして番狂わせの予想のほうが的中した。非常に見どころの多い試合だった。
インテルの勝因の一つは、バルガス監督の作戦成功である。
守りでは、バルサの両サイドのロナウジーニョとジュリをしっかりマークさせ、他の選手はゾーンのきびしい守りで、バルサの選手に個人技を発揮するスペースを与えなかった。4人の守備ラインによる守りの一つの形の見本だった。
攻めでは、後半からトップ下に起用したバルガスに「短いパスをつないで攻め込むように」と指示した。後半37分の決勝点は、その狙いどおりの形で生まれた。
得点したアドリアーノは、その6分前に交代出場させたストライカーだった。
★メンタル・トレーニング
世界のスターを集め、史上最高といわれるクラブチームに対して、インテルの選手たちは物怖じせずに、のびのびと自分の力を発揮した。
ブラジルの記者たちの話では、インテルは前日に「特別のメンタル・トレーニングをした」という。バルガス監督の表現では、ホテルの一室に集めて行った「モチベーションのセミナー」である。
「相手の力には敬意を払え。そのためには守りに力を注ごう。しかし怖れることはない。ブラジルのサッカーは世界一だ」と、選手たちに慎重さを求めながら、自信を与えたものらしい。
技術と試合経験の豊かなブラジルの選手たちには、このような心理的な準備がもっとも重要で、そのための方法論もブラジルでは、よく研究されているという。
★スター軍団の弱点
バルセロナが17本のシュート(インテルは10本)を放ちながら得点できなかったの原因には、まず、インテルのゴールキーパー、クレメルの再三の攻守がある。
しかし、その他にも、スター軍団ならではの弱点があった。
第一は「国の名誉のために勝たなければ」というモチベーションが、ないことである。それがブラジルのクラブとの決定的な違いだった。
第二は、過密日程である。バルサにとっては、スペイン・リーグで勝つことが、もっとも重要である。過密日程を全力で消化しながら参加しなければならなかった。
第三は、チームのスタイルを簡単には変えられないことである。スターたちの技術と戦術能力を、彼らの自主的な「ひらめき」の組み合わせによって生かしている。
ライカールト監督としても、簡単にやり方を変えるのは難しいわけである。
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