【ブラジルサッカー通信<2>】
コリンチャンス優勝にわくサンパウロ市
(サンパウロ州選手権決勝・第2戦 5月3日 サンパウロ)
<文・写真 手島直幸(ブラジルに出張中) 2009/5/24>
◆入場券は即完売
5月3日にサンパウロ州選手権(パウリスタ杯)の決勝第2戦があった。
1週間前から切符を獲得する努力をしたけど、実らないまま当日の朝を迎えた。
コリンチャンスのホーム・スタジアムの席は普通定価40R$(2000円)からあるが、決勝戦なので倍の80R$(4000円)ということであった。しかし発売開始後すぐに完売になった。並んでいたのに買えなかった群集が騒いで警官隊が出動したというニュースをテレビで見た。次の日のテレビではグラウンド周辺でダフ屋を取り締まる警官の姿が映し出されていた。
サンパウロの人々の話題はこの試合のことばかりであった。
◆ダフ屋から買うのも断念
4時キックオフなので、昼過ぎにホテルを出て、快晴のもとパカエンブー・スタジアムまで30分ほど歩いた。
すでにコリンチャンスのユニフォームを着た人々がビールを飲みながら気勢をあげている。住宅地の庭から花火がバンバン打ち出されている。 機動隊が完全防備で道路を封鎖している。騎馬警官もいる。
適当な価格でチケットを譲ってくれる人がいないか探しながら、スタジアムを1周する。
木陰でそれらしき交渉をやっているのを見つけた。3、4人が周りを囲んでいるようで厳しい交渉をしているようだった。
結局あきらめた。ダフ屋と交渉中警官に捕まるようなことは避けなくてはならない。
本当の理由は、言葉が通じないことに大いなる不安を感じたためだが……。
その代わりコリンチャンスグッズを買った。
言葉を発せず身振りですべて済ませた。
ランニング10R$、ロナウドのユニフォーム20R$、ストラップ2R$。これくらいで周りに同化できる。
そう、不安解消にはフアンになることだ。
◆コリンチャンス・ファンは1千万人?
サンパウロは人口2千万人の大都市である。その住民は会社、役所などの組織や住んでいる地域社会のほかに、別の大きな共同体に所属している。それは、どのクラブのサッカー・サポーターか、ということである。
サンパウロにある主要3チームのファンの人数比率は、コリンチャンス29%、サンパウロFC21%、パルメイラス13%、サントス7%、その他30%だといわれている(注1)。
市民全体がサッカーファンだとすると1千万人以上のコリンチャンス・ファンがいることになる。
試合のときにユニフォームを着て日ごろの「人格」を捨て、大声をあげ、相手に罵声を浴びせ、チームの勝利に熱狂する。
この求心力はすべてサッカーそのものにあるのだから面白い。
◆すき焼きを囲んでテレビ観戦
スタジアム周辺の雰囲気を十分吸い込んでからホテルに戻った。
日本から仕事で出張して来たグループの団長のアパ−トに6人ほどが集まって、すき焼きパーティーをしなが
らテレビ観戦となった。
テレビ画面を通じても、体にドン、ドンと響いてくるような応援を続けるサポーターの姿を見ながら、あの中にいてわけもわからずわめいて肩を組んで応援する我が姿を想像した。
コリンチャンス・ファンであるわけもない日本人の仲間とすき焼きを囲みながら、やや疎外感を味わった。
サントスは期待の若手マドソンががんばって先制したが、コリンチャンスのアンドレ・サントスが同点の弾丸シュートを決めた。この2人は今後ブラジル代表(セレソン)に選ばれるだろう。すばらしい。
1対1で試合は終わった。
優勝カップを掲げるコリンチャンスの選手に花火の火が広がるハプニングもあった。
この夜、ホテルの外では花火や大声で騒ぎが続いた。
至上の幸福のときだ。騒音とは聞こえなかった。
注1:参考 http://datafolha.folha.uol.com.br/po/ver_po.php?session=538
|